「今日のAさん、どないしたん?」
というくらいナースコールが頻回に私たちを呼んでいました。
もちろん、その度対応しましたが、Aさんにはしっくりこない様子。
Aさんの様子をよく見てみると、いつも傍らにいる御主人がいません。
「さみしいの?」
とたずねると、泣きそうな顔で
「ちがう!」
と少々怒った顔に変身します。
「じゃあ3分だけ話しようか?」
というと
「うん」
と嬉しそうな顔になりました。
県外に住む娘さんのこと、優しい御主人のエピソード、
東京ディズニーランドに行った話など会話がはずみます。
そこへ
「来たよ」
と御主人の登場。また泣きそう顔になり、
「遅かったでぇ」
と文句を言います。でも、御主人は
「5時半に帰ってくるっていうただろう」
と笑顔で答えました。それに対して、Aさんは
「看護師さんが5分だけ話してくれるっていうけん、話しよった」
と。
「えーっ、3分のはずだったけど・・・」
と私は心の中で思いつつも、時計を見ると5分たっていました。
つまり、Aさんは時計を見ながら、私と話をしていたのでした。
そんなAさんですが、御主人が帰ってこられたときの笑顔にかなうものではありません。
仕方ないなと思っていたら、御主人からねぎらいの言葉を頂きました。
御主人には全てお見通しといったところでしょうか。
その後はナースコールもなく、部屋からは夫婦の明るい会話が廊下に響いていました。
そんな時間は、私たち看護師にとっても至福のひとときです。
看護師 大道 千絵